遅ればせながら、「文系AI人材になる」を読みました。
AIのことを全く何も知らない方向けに丁寧に書かれた本だな、というのが全体の感想です。
本記事では、文系AI人材である自分が「文系AI人材になる」を読んで、
「そうそう!」と特に共感する部分や、
この本では詳しくは書かれていないけど、現場の実態としては●●だな・・という”実態”についても読者の皆様にしていければと思います。
■前提
私は2020年4月からAIコンサルタントとして未経験から転職いたしました。
まだ半年の実務経験を積んでいる人間の意見ですので、あくまで一個人の”意見””現場の実態”として捉えていただけますと幸いです。
転職して半年たった振り返りも以下の記事でしておりますので、よろしければお読みください。
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未経験からデータサイエンティストに転職して半年たったので振り返る
Hawaiiこんにちは、Hawaiiです。タイトルの通り、未経験からビジネス寄りのデータサイエンティスト(AIコンサルタント)に転職して半年が経過したので、振り返ろうと思います。 &nb ...
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本記事の目次は以下の通りです。
①各論で共感した部分
(1)業種ごとのAIエキスパートが登場する
(2)【番外編】AIを知る、ことの大切さ
②現場の実態紹介
(1)AIを”使う”ことがポピュラーになりつつある
(2)専門知識はエンジニアに聞けばいい、の誤解
③まとめ
①各論で共感した部分
(1)業種ごとのAIエキスパートが登場する
すべての分野を網羅するのではなく、今後は業種ごとのAIエキスパートが登場してくるはずだと、本の中で書かれています。
これについて非常に同意でして、私の会社でも、
実態としては得意・専門の業種を各自が持っています(もちろんある程度経験がある人前提)。
細かい話を書きすぎることは控えますが、「●●の企業さんから話を頂いた」となると、内容にもよりますが、
「じゃあ一旦△△さんだね」というように、割と専門分野が分かれています。
当然と言えば当然なのですが、1つの業界でもいわゆるドメイン知識を得ることは非常に難しく、年月がかかります。
ですので、専門の業種がわかれてくるのが自然なことだと、本を読んでいて感じました。
どの業種にも深く関われる人って、ほぼいないのでは、と思います。
(2)【番外編】AIを知る、ことの大切さ
この本の中では「まずはAIを知る」というのは、
「恐れるのではなく、きちんとAIがどんなものなのか理解して、共存していこう」という文脈で書かれています。
ここでの私の感想の観点はかなりずれますので、
著者の方からしたら「そんなことが言いたかったんじゃない」という内容だと思いますが、
「組織」の観点で感想を述べたいと思います。
私は、AIは特に管理職といった上の立場の方ほど知るべきだと感じます。
前職の話を例に出しますと、昨年頃からわが社も業務の一部でAIを活用しよう、というプロジェクトが立ち上がりました。
(ルールベースの自動化とかではなく、自然言語処理が必要な、割とレベルが高いものだと思います)
このとき、実態としては管理職はほぼAIについて理解がなく、「なんかすごそう」というイメージで、
「このプロジェクトには多大なパワーをかける必要がある!」という流れになりました。
(今思うと、AIやりたい!という温度感ですね・・)
そこで起こった悲劇はこちらです。
このプロジェクトにアサインされたメンバーの、AIプロジェクト以外の業務が全てプロジェクト外のメンバーに渡され、プロジェクト外のメンバーの負担が非常に重くなってしまったのです。
さらに悲劇だったのは、このAIプロジェクトの難易度も高かったこと・なかなか進捗しなかったことから、
当のプロジェクト内のメンバーはぶっちゃけ「暇」な状態になってしまいました。
こうして、「プロジェクトメンバーは定時までも仕事がないけれども、
プロジェクト外のメンバーはプロジェクトメンバーの仕事もあるので夜中まで働かないといけない・・という悲劇」に陥りました。
当然、この事態は管理職に報告がされました。
しかし、管理職の方がAIプロジェクトの仕事の内容がわかっていなかったことと、
さらに上の役員レベルにまでこのAIプロジェクトを大々的に打ち出してしまったようで、
「AIプロジェクトメンバーに、それ以外の仕事は役員への見え方が悪いから振れない」という返答でした・・この後さらにどんな悲劇が起こるかは、想像に難くないと思います。。
この本の主旨とは全く違った観点での感想になりましたが、管理職ほどAIを知るべきだと、私は思います。
②現場の実態の紹介
ここからは、本を読んでいる中で「現場の実態はこうだな」という点を紹介していこうと思います。
(1)AIを”使う”ことがポピュラーになりつつある
本の中で触れられていますが、徐々に「AIを使う」ことが一般的になりつつあると、私自身も感じます。
代表的なところでいうとGoogleのAutoMLでしょうか。
私が担当させていただいているお客様の中にも、こういったツールを使って自分たちだけでモデリングを回せないか?といった相談をつい最近いただきました。
このあたりは、既存のモデリングを自分たちで行っている我々としては急に言われると冷や汗ですが(笑)、近いうちにいわゆる「普通の」会社員が自分でモデリングをする日も近いんだろうな、と思っています。
但し、これはデータによって話は変わるので1つのサンプルとして聞いていただきたいですが、人がコーディングしたモデルと、ツールを使ったモデルでは精度に差が生まれやすいと感じます。
つまり、ツールは簡単に使える一方、精度はあまり良くない側面もあるということです。
ですので、今後は現場では「お手軽さ」と「精度」を天秤にかけて、メリットが大きい方を選んでいく流れに入るのかなと思っています。
(2)専門知識はエンジニアに聞けばいい、の誤解
本の中で、エンジニアリング等をするのがエンジニアで、文系AI人材はエンジニアとお客さんをつなぐ人、という文脈で語られています。
これ自体は全くもって同意なので、この本自体に異論を唱えることは全くありません。
ただ昨今の流れで少し気になっているのは、ビジネス寄りのAI人材(この本での文系AI人材)についての情報が世の中的にまだまだ少ないことも起因して、下記のように考える人が多い印象を受けます。

・ビジネス寄りのAI人材はお客さんとの折衝をして、専門的なことはエンジニアに聞けばいいのよね
これは、もちろん企業や仕事によっても状況は多少異なると思いますが、誤解だな、というのが自分の考えです。
ビジネス寄りのAI人材に求められる知識・スキルはかなり高いのではないか、というのが半年の実務経験を経た私が今思うことです。
具体的には以下の通りです。
・深い知識がないと、そもそもエンジニアに質問することさえできない
お客さんから聞かれた質問を、そのままエンジニアに丸投げしてきちんと回答が返ってくる、ということはそう多くはないと思います。
「お客さんが質問した意図は何か」「そのために何をエンジニアの方に聞かないといけないのか」
これを整理するだけでも、状況によりますが自身にしっかりとした背景知識(ドメイン知識・機械学習の知識・データベースの知識etc)が必要です。
・エンジニアの方から相談された際、答えられない
各自の職種にもよりますが、ビジネス寄りのAI人材の職種の一つである、PMやコンサルをする方はずばりこのケースが多いと思います。
というか、まさに今の私がこれです・・。
PMを自身が行っている場合、責任はエンジニアではなくこちら側にあるので、
「精度がうまく出ない」「この数値を誤って集計していた」
というエンジニアの方からの相談を、私の職場では割と頻繁にいただきます。
こういったときに、細かい手の動かし方はわかっていなかったとしても、「なぜ精度が上がらないのか」等を一緒に考え、必要に応じて自分からお客さんに報告する必要があります。
「専門的なことはエンジニアの方に聞けばいいんだよね」とイメージを持たれている場合は、実態は異なります(少なくとも私の職場はそう)ので、今回読者の皆さんにお伝えいたしました。
③まとめ
いかがでしたでしょうか。
AI・データサイエンスの領域に関わる仕事をしてみたいがそういった畑出身ではない方は、この本はイメージを付けるために非常に参考になるなと感じました。
その中でも、「自分の職場の場合はこうです」という実例をお伝えしてきました。
あくまで数多いるAI関連の人間の一人の話ですが、少しでも、よりイメージを付けるお役に立ちましたら幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございました!